水道の管路は、多くが地中に埋設されており、目視による点検が非常に難しく、劣化状況の把握が課題となっている。
このため、企業庁においては、本年9月26日に日本水道鋼管協会と共同調査に関する協定を全国の水道事業者で初めて締結した。
この共同調査において、道路工事等の掘削により露出した水道管の腐食状況や周囲の土壌を実際に測定・分析し、管路の更新時期を見極める材料にしていこうと考えている。
あわせて、管路の点検を効率化するため、新技術の導入を考えている。名古屋商工会議所が主催する民間企業とのマッチング事業を活用し、様々な企業から提案を受けており、本年度はAIを用いた管路診断技術について調査を進めることを考えている。
9: 【
富田昭雄委員】
AIを使った技術ではフラクタが有名であり、全米では26州と契約を締結している。本県でも豊田市が契約しているようだが、古いものから順番にやるよりも、リスクの高いものを先にやると、破裂する確率が3割から4割低くなると言われている。
周囲の地盤や地形などのパターン、工事の年月等のビッグデータをAIに読み込ませて解析し、どのような順番でやるのかを企業が提案するわけだが、こういった技術も含めて、いろいろなものを取り入れながら計画を練ってもらいたいが、どうか。
10: 【
水道事業課長】
豊田市で導入されている新技術については、昨年度企業庁においても聴き取りを行い、県営水道に応用可能かどうか検討を進めている。
市の水道と比べ、県営水道は布設された面積が広いことや管の口径が大きく、深く埋まっていることから、豊田市の事例をそのまま適用することは難しいと分かっているが、新技術を用いた管路の老朽化診断は非常に重要であり、県営水道に則した形で、効率的な管路更新を行うべく、検討を始めている。
11: 【
富田昭雄委員】
ぜひ新技術を取り入れながら、効率よく進めてほしい。
その場合、水道料金に占める水道管の費用は、工事費も含めてどの程度を占めるのか。
12: 【
水道計画課長】
管路については、供用開始から法定耐用年数等で減価償却をしており、毎年度料金がかかる。全体の減価償却費の約2割が管路であり、現在、回収している。
13: 【
富田昭雄委員】
水道管の費用も織り込み済みということであるが、今後人口が減り、気候変動があり、突発的な事故も危惧される中、将来を見据えた計画をしっかりと練って、水道事業を進めていかなければならないと思うが、水道管の費用が膨れ上がっていくことはないのか。これらの要素も見込んで、40年を超えた水道管を計画的に更新していくことができるのか。
14: 【
水道計画課長】
企業庁の経営については、経営戦略を作成し、長期的な視点を持って事業を運営している。
管路や施設の更新は、それぞれ更新計画等に基づき計画的に進めており、その計画が終われば新しい計画を立てる。
現在、令和7年度までの経営戦略であり、時期が来れば次の経営戦略を策定し、計画的な事業運営に取り組んでいく。新しい技術も取り入れながら、管路更新の仕方も見直しをしつつ、安定的な経営をしていけるよう、長期的に対応していきたい。
15: 【
富田昭雄委員】
水道管があちこち破裂し、それが水道料金の値上げにつながることがあってはいけない。長期戦略を考えながら、ぜひ進めてほしい。
もう一つは、役所の水道局の人材が不足しており、民間企業においても人材が育っていないと聞くが、大丈夫か。
16: 【
水道計画課長】
企業庁には、水道関係の技術者が300人ほどいる。これまで、ベテランの職員等が大量に退職した時期もあったが、計画的に人員を確保している。
また、人材育成として、入庁から段階的に専門技術を習得できるよう研修等を計画的に行っており、現場でのOJTと併せて若手職員に技術を継承することで、今後も安定的に事業が運営できるよう努めている。
17: 【
富田昭雄委員】
技術はAIを活用するが、最後の判断は人間であるため、経験値がある人が水道事業に携わらなければならない。事業者に安定的な工事を進めてもらうためにも人材の確保は大事であるため、その辺りを考えてほしい。
水道事業に限らず、インフラ施設で考えると、ガス管や電気の鉄塔も老朽化しており、整備が必要な時期に来ている。
水道事業について、コストが膨れ上がらずに、安定的に運営するためにも、先を見据えた計画が大事である。その辺りを見据えてしっかりと計画を立ててほしい。
これから水道管は、そういう技術を駆使すれば、ある程度破裂などの事故を起こさずに進めていくことができるのか。
18: 【
水道事業課長】
水道管は地中に埋まっているため、今回の新しい技術を用いて、できるだけ危険度の高いところを的確に把握し、限られた予算や人員を活用して、大きな水道事故がないよう努めていく。
19: 【
富田昭雄委員】
ぜひ様々な市町村や民間企業と連携し、進めてほしい。
20: 【
木藤俊郎委員】
尾張工業用水道について伺う。
一宮市をはじめ尾張西部地域は、なだらかな地形と交通の利便性、また、良質で豊富な地下水に恵まれて、古くから日本を代表する繊維産業の集積地として栄え、戦後日本の経済発展に大きく寄与してきた。
昭和60年に給水を開始した尾張工業用水道事業は、特に尾張西部地域の繊維産業、中でも特に染色業への工業用水の供給で、その発展に大いに貢献をしてきた。
しかし、昨今、撚糸、染色、整理、縫製という繊維加工産業は、中国や東南アジア諸国との競争が激化し、賃金格差が価格に及ぼす影響は大きく、中堅の繊維工場の倒産や廃業が相次ぎ、それが連鎖をして家族経営の零細工場の倒産や廃業が続いた。
現在は、商品に強みを持った企業が生き残り、多品種小ロットの生産を行い、欧州の有名ブランドからの注文も入るなど、一部の企業が尾州ブランドのネーミングで活躍している。
しかし、近年の原油価格の高騰や国際的な原材料価格の高騰、食料品やエネルギー価格の高騰など、企業経営を取り巻く環境は厳しさを増している。
県では、コロナ対策と共に、経済対策、企業経営対策も行い、また、一部の市町村では、一般家庭への水道料金の基本料金を一部減免するなどの対策を取って、企業や家庭を支えている。
今回の12月定例議会では、燃油価格の高騰の影響を受けている繊維事業者に対し、
支援金を交付する補正予算が提出されているが、企業庁には染色業など、繊維産業事業者の現状を把握できる機会やチャンネルはあるのか。
21: 【
水道事業課長】
企業庁では、受水事業者との意見交換会を毎年2回開催しており、本年度は11月と1月に、工業用水道事業の経営状況や地震対策の進捗など、安定供給に向けた取組などを伝えている。
また、その際には、事業者から意見や要望等をもらっており、こうした機会に各事業者の現状なども聞きながら、丁寧に説明をすることで、信頼される工業用水道事業の実現に努めている。
なお、日頃から、各事業所と距離が近い尾張水道事務所をはじめとする各水道事務所の職員が、事業所の意見や問合せを聞いており、必要な場合には事業所を訪問し、詳しく話を聞いた上で、迅速かつ適切な対応ができるよう心がけている。
22: 【
木藤俊郎委員】
そういったチャンネルを生かして、しっかりと事業者の経営状況や将来の投資、いろいろな相談に対応してほしいと思う。
染色業を例に出したが、十数年前にセブンイレブンが東海エリアに進出したことに伴い、おにぎりや総菜などの食品業や食品加工業なども進出し、大量の工業用水を使用することとなった。交通網が発達すれば、今までにない業種、業界の工場の進出もある。
今、食品業などは、原油原材料高や運送コストの上昇により、ここ数年で経営状況に変化が出てきている。そういう変化に応じた機敏な対応ができるよう工業用水のインフラ整備には投資が行われており、それを契約水量という形で返済をしてもらう側面もある。
これまで意見交換会の中で、事業所から出された要望にどのように対応してきたのか。
23: 【
水道事業課長】
企業庁では、日頃から各水道事務所の職員が受水事業所と連絡を密にし、現場の声を直接聞くよう心掛けている。
例えば新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、尾張工業用水道事業での対応として、経営状況が悪化し、工業用水道料金の支払いに困難な事情があった3者の受水事業者の負担軽減を図るため、料金の徴収を猶予する措置を実施している。
また、平成15年度には、同じく尾張工業用水道において、工業用水法による地下水のくみ上げ規制により、地下水から水源を転換した経緯のある事業所へ減量希望調査を実施した上で、実給水量が契約水量の6割程度を下回っている33の事業所に対し、特別減量として契約水量の見直しを行っている。
このように各事業所の声をしっかりと受け止めながら、今後も適切かつ丁寧な対応に努めていく。
24: 【
木藤俊郎委員】
3者に支払い猶予を行ったということだが、新型コロナウイルス感染症の拡大もいずれは終息に向かうとともに、いつまでも原油原材料高が今の水準ではないと思うため、そうなったときにはまた料金を回収するなど、細やかな対応をお願いする。
今、例に出した平成15年の契約水量の見直しは、異例なことであった。私も議員になって最初の9月定例議会で質問したが、当時、地盤沈下の対策として引いた尾張工業用水の特殊事情を勘案しての経営救済策として、契約水量を思い切って見直すことも行われた。
税金で工事をしている以上、契約水量に応じた負担をしてもらわないと、県民への説明がつかないので、できる限りの救済をお願いしたい。
もっとも、原油原材料高については、企業庁による救済だけではなく、金融面、ガソリン、燃油に対する
支援金など、県を挙げての対策が必要である。
25: 【直江弘文委員】
企業庁の用地造成事業は、本県の戦後のモノづくり産業に対して多大な貢献をしてきた。
当時は市町村も製造業を誘致するために土地を取りまとめ、企業庁と一緒に開発を行い、一定の効果を生み出してきた。
しかし、産業構造が大きく転換し、ハードの時代からソフトの時代へとなってきている中、企業庁の事業そのものの見直しを行う必要があると思う。
用地造成事業においては、実際に工事を行うのはゼネコンで、そこにさらに企業庁の人件費や経費が上乗せされて用地売買が行われる。高度経済成長で収益が上がっているときはよいが、これからはしぼんでいくため、それに合わせて経費やコストを節約し、新たな投資についても相当の採算性がない限り考えなければならない。情報の見える化を行い、AIで分析をして効率を高める、つまり生産性を高めていくことをしなければ、企業庁の存在そのものが問われることになる。
企業庁も相当な職員を抱えており、市町村からの用地造成の要望も減ってくるため、ここで一旦立ち止まって見直すことが必要である。
企業庁は実際に工事をしていないため、間接業務が圧倒的に多いと思う。生産性を高めるため、情報の見える化、DXを進めて大変革をするくらいの気持ちで取り組む必要があると思うが、どうか。
26: 【企業誘致課長】
時代が変わり、産業構造も変わってきた中で、業種の拡大も必要であると考えている。
具体的には、地球温暖化対策が緊急課題となっているが、化石燃料を代替する燃料を製造する企業と契約に向けた手続を進めている。
また、グリーントランスフォーメーションの流れの中で、再生プラスチック関係の製造を行う企業からの問合せやバッテリーの再生事業を行う企業の情報をもらっており、こうした時代の最先端を行く企業への誘致にも取り組んでいきたい。
産業構造の変化がスピードを増す中で、新たな立地ニーズも生まれてきている。企業庁としてもアンテナを高く張り、製造業のみならず多様な需要を受け止められるように、地元市町の理解を得ながら積極的に企業誘致に取り組んでいきたい。
27: 【直江弘文委員】
業種の拡大や新しい業態の誘致ではなく、企業庁の規模をもっと縮小し、必要最低限にしてコストを下げる努力をすべきではないか。
いわゆるDX、情報の見える化を行うことで全体や新たな展開が見えてくる。それぐらい抜本的なことをやらないと、企業庁そのものの存在が薄らいでくると思うが、企業庁長の考えを伺う。
28: 【企業庁長】
製品を作り、売るという従来型のやり方だけではやっていけない時代になってきており、しっかりと事業ニーズを把握し、必要となる投資等をよく考えて事業に着手する必要がある。企業庁においても、しっかりとマネジメントして事業を進めていく必要がある。
企業庁では、これまで内陸用地をはじめ造成を行ってきたが、在庫として保有している用地もある。こうしたものについては、新たな業種の企業にも活用してもらえるよう、努力している。
先日、東京都で開催された産業立地セミナーに出席した。首都圏の企業に向けたセミナーであるが、東京都では再開発等の投資がまだ進んでいる印象であった。東京都では土地が限られているため、本県にも目を向けてもらえるよう、しっかりと取り組んでいきたい。
そして、これからという意味では、様々な方面にアンケートを取り動向を確認しており、最近の大きな動きとして、次世代半導体の国内生産を目指し、民間企業を中心とする株式会社が立ち上げられた。周辺分野を担う企業を含め、半導体事業は5GやEV、ロボット等に対してこれからも必要となる業態である。本県に目を向けると、電気自動車の生産には今後さらに倍以上の半導体が必要であり、大企業は自社内の生産を目指すという動きもある。こうした企業からのニーズをしっかり把握しながら、企業庁としては生産性や採算性が問題になる中でしっかりと経営努力をし、引き続き危機感を持って対応していきたい。
これまでも市町村と連携して事業を進めてきたが、さらにこういった面も含めて情報交換をし、不動産業者やコンサルティング会社等の専門家の意見もしっかり取り入れながら、本県の産業の振興に向けて努力していきたい。
29: 【直江弘文委員】
そういう方向で努力すると同時に、組織が膨れ上がっているため、小さくして効率を高め、間接業務をコンパクトにし、新たな産業へと業種を広げていくことを同時に進めていかなければならない。
売れ残りの土地について、不動産業界と相談をしながら進めているということだが、土地の売却は業者に任せて、マージンを払うぐらいの気持ちで売り切る、売れる形で商品をつくる必要がある。売れないのには何か原因がある。年間何億円と使って、何十人もの営業マンを使っているため、効果が上がらなければ意味がない。それだけ税金も使っているし、小さい組織にすることでコストが下がる。利用者に対してコストを下げることが大変大事な時期であり、これだけ物価が上がってくると、県民は大変な状態である。
無駄を省き、間接業務を小さくして、料金を下げるぐらいの気持ちでやらないと、企業庁の存在意義を問われるときが来ると言っても過言ではない。早急にはできないと思うが、方向を決めて全員で話し合い、それに向けて努力をしてほしい。民間企業がそうして生き残りをかけているため、役所がやるのは当たり前である。トヨタ自動車株式会社も社運をかけて取り組んでいる。緊張感を持って取り組んでほしい。
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